スポーツをする子どもにとっての食事の基礎知識や試合前後の食事のポイント
スポーツをする上で練習やトレーニングと同じくらい「食事」は大切です。食事を摂る事によって運動時に必要なエネルギーが作られます。成長期の食事内容で体が形成され、丈夫な骨や筋肉が作られていきます。
スポーツをする子どもの食事方法と大人との異なる点や気を付けたいポイントについて説明します。食事で子どもにどのような影響があるのか、練習や試合にどう響いてくるのか、食事内容も含めて考えてみましょう。
スポーツをする子どもの食事
体重あたりのエネルギー必要量が多い(基礎代謝分+活動分の他に、成長分のエネルギーが必要)
子どもは、体重1kgあたりのエネルギー(カロリー)必要量が多いです。例えば、体重1kgに対しての基礎代謝量は、18~29歳の男性は24kcal/kgであるのに対して6~7歳の男の子では44kcal/kgと倍近くの差があります。
子供の場合は、基礎代謝分と活動分だけではなく体を成長させるためのエネルギーも必要となります。長期にわたり、摂取エネルギーが不足すると身長が伸びにくい、生理不順、骨の形成障害などのリスクが高まります。
たんぱく質をより多く必要とする
エネルギーと同じように子供は、大人よりも多くのたんぱく質を必要とします。たんぱく質は、筋肉の材料にとても大切です。また、免疫を作り、骨の形成や身長を伸ばす働きをする重要な栄養素です。たんぱく質は、肉、魚、大豆製品、牛乳などに多く含まれています。
カルシウムをより多く必要とする(スポーツをすると汗でカルシウムが排出されてしまう)
カルシウムは、成長期に多く蓄積します。この時期にカルシウムを多く蓄積すると身長の伸びや将来の骨量の保持に繋がるのです。大人のカルシウムの推奨量は、1日650gですが、12歳の男子では1日1000g、女子では800gを推奨しています。スポーツをする子供は、汗でカルシウムが排出されてしまいます。その分のカルシウムを補いながら摂取する必要があります。
脂肪の利用率が高い
子供は、大人に比べて体積が小さいので体のグリコーゲンの蓄積量が少ないです。グリコーゲンは、体の糖質の貯蔵庫です。そのため、運動中のエネルギーとして脂肪の利用率が優先的に高くなります。揚げ物や炒めものを特別増やす必要はありませんが、極端な脂肪分のカットは控えましょう。
こまめな水分補給が必要(子どもは大人よりも熱中症になりやすい)
子供の体には、熱しやすく冷めやすい特性があり、大人よりも熱中症になりやすいので運動させる場合の水分補給にはより注意が必要です。
子供は、発汗機能が未発達なため気温が体温よりも高い環境下では体温が上昇していきます。子供の頬が赤くなりやすいのは、それだけ熱が体内に溜まっているからです。こまめな水分補給を心がけて下さい。
スポーツをする子どもの食事のポイント
色々な食品に馴染む機会を作る(好き嫌いなく食べられるように)
ジュニアアスリートに最も重要なのは、色々な食べ物を好き嫌いなく食べる事です。この時期の食生活は、大人になってからも大きく影響します。アスリートの基本である主食、主菜、副菜、牛乳、果物とバランスの良い食生活をする事がとても大切です。
主食は運動するためのエネルギー源になり、主菜は体の組織を作るためのたんぱく質の供給源になり、副菜や果物は体の免疫を高め、乳製品は強い骨作りに重要です。子供は、野菜が苦手な子が多いですが、丈夫な体を作るために必要な栄養素なので子供自身によく理解させる事も大切です。
朝食を食べる(集中力の低下、筋力や代謝の低下、体脂肪の増加へつながる)
朝は、前日の夕飯から時間が経っているのでエネルギー不足です。朝食を抜くとエネルギーが不足したままになり、最後まで集中力が続かなくなります。早寝早起きを習慣づけ、毎日朝食を摂るようにしましょう。
また、朝食を抜くと体に必要なたんぱく質を十分に補給出来ません。食事からのエネルギーが不足していると筋肉や基礎代謝の低下を招きます。また、体脂肪の増加にも繋がります。前食から時間が空いて昼食や夕食を食べることで血糖値が急激に上昇し、摂取した糖質を体脂肪として溜め込みやすい事が原因と上げられています。
間食を上手く取り入れる(3食で取り切れない栄養素を補給するために大切)
子供は体が成長するにつれ、たくさんの栄養を摂取する必要があります。しかし、スポーツをする子供は、運動量が多いため1日3食の食事では必要な量を食べきれない事もあります。
ジュニアアスリートにとっての間食は、3食で取り切れない栄養素を摂取するために必要な補食なのです。おにぎりやバナナなど栄養価の高い物がおすすめです。運動直後は、成長ホルモンが多く分泌されているので筋肉の超回復を効果的に行うためには、運動後に出来るだけ早く栄養補給をする事が理想です。
噛む食事を取り入れる(あごの力が強くなる、脳を刺激する、消化を助ける)
噛みごたえのある食事を摂る事であごの力が強くなります。あごは、体のバランスにとても重要な位置です。噛む力が備わっていれば、運動中にしっかりと歯を食いしばる事ができパワーを発揮しやすくなります。
ゆっくりとよく噛んで食べる事で脳が刺激され、味をしっかりと感じる事ができ、健やかな発達に繋がります。よく噛むことで満腹中枢が刺激されるので食べ過ぎを防ぎ、肥満防止になります。また、口内の唾液が分泌され食べ物の消化を助けます。食べ物が細かくなることで胃腸の負担も軽くなり、消化不良になりにくいです。
スポーツをする子どもの必要エネルギー量と食事量
男女別の必要エネルギー量
摂取エネルギー量は、以下を参考にしてください。
男子
年齢 |
エネルギー(kcal) |
6~7歳 |
1.550~1.750kcal |
8~9歳 |
1.850~2.100kcal |
10~11歳 |
2.250~2.500kcal |
女子
年齢 |
エネルギー(kcal) |
6~7歳 |
1.450~1.650kcal |
8~9歳 |
1.700~1.900kcal |
10~11歳 |
2.100~2.350kcal |
具体的な食事量は食事バランスガイドの量を参考に
それぞれのグループをどれだけ食べたら良いかの量は、1つ2つと数えます。それぞれの「つ」はグループごとに数えます。
主食 |
4~7つ |
ご飯.パン.麺.パスタ |
数え方はおにぎり1個、ごはん1杯(小盛)、食パン1つです。ごはん1杯(普通盛)は1.5つ、麺類は1人前で2つと数えます。 |
副菜 |
5~7つ |
野菜.きのこ.いも. 海藻料理 |
小鉢や小皿に入った野菜料理1杯分が1つです。中皿や中鉢に入ったものは2つくらいです。 |
主菜 |
3~6つ |
肉.魚.卵.大豆料理 |
卵1つの料理、納豆1パック、豆腐1/3が1つです。肉料理1人前は3つ位です。魚1尾、刺身は2つです。 |
牛乳.乳製品 |
2~4つ |
ヨーグルト1パック、プロセスチーズ1枚が1つです。牛乳200mlで2つです。 |
|
果物 |
2つ |
みかんやバナナなどの小さい果物は1個で1つです。りんごなどは1個で2つです。 |
競技や試合前後の食事のポイント
試合前日の食事(糖質中心で脂質は控える、量は控えめに、夕食は早めになど)
試合当日までに運動時のエネルギーを蓄えておくために糖質(炭水化物)中心のメニューが基本です。ごはん、パン、うどん、果物などが良いでしょう。
和菓子などは脂肪分が少なく、糖質を多く摂れるので間食におすすめです。十分なエネルギーを蓄えなければなりませんが、体が重くなってしまうので量は控えめにしましょう。
夜遅くに食事を摂ると食べ物の消化が寝る時間になっても終わりません。寝る3時間前までには、夕食を済ませます。
また、脂質や食物繊維は、控えます。脂肪分は消化吸収に時間がかかり、食物繊維は胃腸に負担がかかります。普段は大切な栄養素ですが、試合前日は控えてください。
試合当日の食事(糖質中心、試合開始の3~4時間前までに)
試合当日は試合開始までの時間と消化吸収を考慮し、試合開始の3~4時間前までには食事を済ませます。メニューは、糖質中心で消化の良い物を選びます。腹8分目を目安にしましょう。おにぎりやバナナなどは、エネルギーになりやすいのでおすすめです。
競技や試合時のお弁当づくりのポイント
料理ごとに適切な量をつめる(1/2にご飯、1/4ずつにおかずと野菜)
ごはんばかりやおかずばかりなど偏った内容は避けます。いつも通り、バランスのよい料理をお弁当に詰めましょう。子どもが好きな物を1つ2つ入れてあげると緊張も緩和し、頑張れる気力にも繋がります。
汁気を出さない(水分の少ない食材、水分を吸収する食材)
菌は、水分のある所で繁殖します。汁気のあるおかずや水分を吸収する食材などは、出来るだけ避けましょう。野菜はよく水分を切って別容器に入れる、ドレッシングなどは直前にかけるなど配慮をします。また、食材は、しっかりと加熱して入れる事が重要です。
防腐効果のある食品を活用する(お酢、梅干し、カレー粉など)
酢には、菌の繁殖を抑える働きがあります。ご飯に酢を少量混ぜる、おにぎりに梅干しを入れるなどしましょう。カレー粉を使ったおかずを詰めるなど防腐効果のある食材を活用しましょう。
涼しいところで保管する(保冷剤、保冷バック)
直射日光に当たる所で保管するとすぐに痛んでしまいます。保冷バックに保冷剤を入れてお弁当を保管しましょう。車内など熱のこもる所に置くのも要注意です。涼しく、風通りの良い日陰で保管します。
スポーツをする子どもにとっての食事の基礎知識や試合前後の食事のポイントまとめ
スポーツをする子どもは、必要なエネルギー量がとても多いです。特にたんぱく質やカルシウムをたくさん必要とします。子供は、熱中症になりやすいので水分補給がとても大切です。
子供には、色々な食材に触れさせる、朝食を食べる習慣づけをする、間食を上手く取り入れるなどの食事の際の大切なポイントがあります。試合前日や当日の食事は、糖質を中心に消化の良い食事を心がけます。試合時のお弁当はバランス良く、傷みにくいように配慮して作りましょう。
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