持久力をつけるための食事のポイントや注意点
持久力競技の選手は、長時間有酸素運動を続けるため、たくさんのエネルギーを消費します。長時間の運動をベストな状態で続けるためには、どのような食事を摂ったら良いのでしょうか。
持久力をつけるための食事のポイントや持久力競技の選手が陥りやすい障害などをご紹介致します。持久力競技をする上で気をつけるべき点や、摂取するべき栄養素などをトレーニングのご参考にしてみて下さい。
持久力競技の特性
有酸素運動を長時間続ける
陸上長距離やマラソンなど長時間有酸素運動を続ける競技が持久力競技です。心臓血管系、呼吸器官系、骨格筋系の3つの持久力を合わせたものを全身持久力と呼びます。
筋肉で効率の良い酸素を利用するために呼吸と循環機能を活用しているのが有酸素運動です。疲れにくく、動き続ける体を作るためには、有酸素トレーニングをしましょう。有酸素トレーニングを続ける事で心臓や血管、呼吸器が長く動きつづけることに順応するようになり、酸素を体内にたくさん取り入れても筋肉の内部で消費出来るようになります。
大量の酸素やエネルギーを消費する
持久力競技の選手は、大量の酸素を体に取り込みます。そのため、鉄分を多く消費してしまい酸欠や貧血が起こりやすいです。長時間動き続けるためエネルギーの消費も著しいです。
持久力競技の選手は、糖質を多く摂る必要があります。脱水症状になるリスクも高いので水分補給がとても大切です。
筋肉増量のためのウエイトトレーニングはあまりやらない
持久力競技の選手は、純粋な筋肉増量が目的のウエイトトレーニングをあまりしません。走り込む事が基本のトレーニングです。
しかし、長時間走るためのウエイトトレーニングは、練習のメニューに入ります。適度なウエイトトレーニングをすることにより筋力や筋パワーが増え、より楽に効率的に走ることが出来るようになります。また、怪我への耐性が増し、関節の安定性や腱が強くなります。
運動後はグリコーゲンが不足しがち
短時間の運動の場合は、筋グリコーゲンがエネルギーとして使われますが、長時間の運動では脂肪も使われます。筋グリコーゲンが体内から消費されてしまうと疲れて体が思うように動かなくなってしまいます。
肝グリコーゲンがなくなると集中力が切れて頭が働かなくなってしまい低血糖状態に陥ります。スタミナ切れにならないためには、毎食きちんと糖質を摂りましょう。運動直後に糖質を摂るのがおすすめです。
持久力をつけるための食事のポイント
基本は主食、主菜、副菜、果物、乳製品の揃った食事を
私達の体は、それぞれの栄養素が複雑に絡み合って筋肉や血液などの各組織を作っています。食事のメニューを考える際には、一汁二菜のおかずに果物、乳製品を揃えた食事を用意しましょう。主食、主菜、副菜、果物、乳製品といった栄養バランスの整った食事が理想的です。
エネルギー源となる糖質は多めに摂る(ご飯、パン、バナナなど)
有酸素運動では、運動時間が長いためにエネルギーをたくさん使い、消費してしまいます。このエネルギーを消費される前、すなわち運動をする前にしっかりと食事で補給するのが望ましいです。
グリコーゲンの回復には、糖質を十分摂取することです。体を動かすためのエネルギーの源であるグリコーゲンは、糖質から作られています。練習後に糖質が不足していると疲労が残る、筋肉の超回復が遅れることになります。朝、昼、晩はきちんと主食を摂るようにしてください。
間食では、バナナやカステラ、ゼリーなどの消化の良い物でエネルギーを補給するのもおすすめです。
糖質の代謝に関わるビタミンB1を多め摂る(豚肉、うなぎ、タラコなど)
摂取した糖質を余すことなく活用する上では、糖質の代謝に関わるビタミンB1を多く摂取することも大切です。ビタミンB1の不足は、疲労の原因になります。
動物性食品を中心にビタミンB1は、含まれており、その中でも特に多く含まれている食品は、豚肉、うなぎ、タラコです。また、ビタミンB1は、白米よりも玄米や雑穀米に多く含まれているので毎日少しずつ白米に混ぜてみると良いでしょう。
酸素を運ぶための鉄分を多めに摂る(レバー、牛肉など)
持久力競技では、体内の鉄分が不足してしまうために貧血が起こりやすいです。持久力競技では、酸素の消費が著しく酸素を運ぶ役割を持つ鉄分の消費も激しい事が理由です。貧血の状態では酸素を運ぶ力が低下してしまうため普段の食事から鉄分をしっかり補給して予防をする必要があります。
鉄分は、レバーや牛肉、大豆やほうれん草、マグロや貝類などに多く含まれています。ヘム鉄は、特に動物性食品であるレバーや牛肉に含まれ、体に吸収されやすいという特徴があるので意識して食べると良いでしょう。反対にお茶やコーヒーに含まれているタンニンは、鉄分の吸収を阻害します。貧血の症状がある方は、控えた方が良いでしょう。
汗によって排出されてしまうカルシウムを多めに摂る(牛乳、チーズ、ヨーグルトなど)
持久力競技では、カルシウムを多く摂って強い骨を作ることが大切です。持久力競技は、運動量が多いので汗によってカルシウムが多く排出されてしまいます。カルシウム不足で骨が弱い状態で競技を行うと疲労骨折を起こしやすくなります。
カルシウム補給で代表的な食品は牛乳です。牛乳は、まとまった量を摂りやすいのでカルシウムを多く摂取でき、吸収率も高いです。チーズやヨーグルトといった乳製品もおすすめです。カルシウムは、その他にほうれん草や小松菜などといった緑黄色野菜、ひじきやわかめといった海藻類、豆腐や納豆、小魚などに多く含まれています。
スピードアップや持久力に直接繋がるということではないのですが、長距離を走るのに強い骨はとても大切です。普段からカルシウムを摂取するよう意識してください。
良質なたんぱく質を多めに摂る(肉、魚、卵、牛乳、大豆など)
持久力競技の選手は、瞬発系競技の選手よりもたんぱく質必要量は少ないですが、それでも普通の人よりもはるかに多くの量を摂取する必要があります。たんぱく質の摂取量が少ない場合、筋肉疲労の回復が遅れるだけでなくトレーニング効果が低くなってしまいます。
たんぱく質は、血液中で酸素を運ぶヘモグロビンの材料にもなっているためたんぱく質不足は貧血の原因にもなります。良質なたんぱく質は肉や魚、卵や牛乳、大豆製品に含まれています。筋肉は、常に合成と分解を繰り返しているので朝に良質なたんぱく質を摂取していないと筋肉の分解が進んでしまいます。
一度にたくさんの量を食べるよりも1日3食と補食で良質なたんぱく質を摂取するようにしましょう。
持久力アップのための食事の注意点
減量のし過ぎ(極端な食事制限は筋力や体力の低下につながる)
減量をする際には、注意点がいくつかあります。食事制限は、極端すぎると栄養が不足するため筋肉や体力が落ち込んでしまいます。それは、パフォーマンスの低下やコンディションを保つことが出来ない原因となります。
もちろん、減量中はカロリー制限をする必要がありますが、極端なカロリー制限や食事制限は、おすすめ出来ません。特に女性アスリートは、エネルギー不足からホルモンバランスを崩しがちです。
それは、月経不順などの女性特有の悩みに繫がってしまうのです。また、女性ホルモン不足から骨粗鬆症を招く可能性も高まります。骨粗鬆症は、栄養不足や女性ホルモン不足が重なると10代、20代でも十分にあり得る事です。過度な減量は控えるようにしてください。
減量する場合は1ヶ月に1~2kg程度のペースで
減量に取り組む際には、十分なたんぱく質摂取を確保しつつ適度な脂肪や糖質制限を行いましょう。体脂肪の減少は月にマイナス1~2kg程度のペースが望ましいです。きちんと栄養を摂取しながら、時間をかけて減量に取り組めばコンディションを落としにくく、リバウンドの可能性も低くなります。
サプリメントはあくまでも補助として(食欲がない時などの補助として活用)
サプリメントは栄養素を手軽に摂取出来るので便利ですが、まずは食事からしっかりと栄養を摂取する事を意識しましょう。主食、主菜、副菜、乳製品、果物といったバランスを意識した食事をとることによって栄養素を過不足なく摂れます。
サプリメントは、食欲がない時やきちんとした料理を作ることが難しい時などに栄養素の補助として活用しましょう。不足しやすい栄養素としてたんぱく質や糖質、カルシウムや鉄分などが上げられます。運動前にはエネルギーゼリーなどで糖質を補給するようにしましょう。運動後のたんぱく質の補給には、プロテインが有効です。
牛乳や乳製品が苦手な方は、カルシウムが含まれたサプリを活用する方法もあります。貧血気味の方で鉄分が豊富とされるレバーなどが苦手な方は、鉄分サプリを利用しても良いでしょう。しかし、サプリは適度な摂取を心がけ、基本は食事から栄養素を摂取するのが望ましいです。
持久力をつけるための食事のポイントや注意点まとめ
持久力競技の特性は、有酸素運動を長時間続ける事です。そのため、大量のエネルギーや酸素を消費し、酸欠や貧血を起こしやすいです。持久力競技の選手は、純粋な筋肉増量のためのウエイトトレーニングはあまりしません。普段から糖質を十分に摂取していれば、運動後のグリコーゲンが一気に減少することは少なくなります。
持久力をつけるためには、主食、主菜、副菜、乳製品、果物といったバランスの取れた食事をきちんと取る事が大切です。有酸素運動の場合、糖質がエネルギーの源となるため多めに摂取することを意識します。ビタミンB1は、糖質の代謝に繋がるので糖質を同量に摂取しましょう。
また、酸素を運ぶための鉄分や体のエネルギー源となるたんぱく質、汗によって排出されてしまうカルシウムを多めに摂取するよう意識しましょう。
持久力をアップするために注意する事は、過度な減量です。栄養不足は、筋力や体力の低下を招き、女性選手の場合はホルモンバランスを崩してしまいます。減量は月に1~2kg程度のペースが望ましいです。サプリメントを活用する場合は、あくまでも食事の補給として利用しましょう。
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