しかし実際に漢方を選ぶとなると効き目や特徴がわかりにくく、何が自分の体質に合っているのか選べないというお悩みも聞かれます。今回は漢方の効き目や特徴について調べてみました。自分に合った漢方を探したい時にぜひ参考にしてみてください。
- 目次
- 1. 漢方薬とは?
- 1-1. 植物や鉱物などの薬としての性質を持っている生薬を調合したもの
- 1-2. 「中医学」が日本に伝わり独自の発展の末に「漢方」と名づけられた
- 1-3. 診療所の71.8%が漢方薬を処方
- 2. 漢方にはどんな効き目や特徴がある?
- 2-1. 体質改善が目的の場合
- 2-2. 困ったときに使いたい
- 3. 即効性のある漢方もある
- 3-1. 初期の風邪などには即効性を発揮する漢方もある
- 3-2. 急性病(風邪)に使われている漢方薬
- 4. 漢方選びのポイント
- 4-1. 他人が効いたから自分に効くとは限らない
- 4-2. 養生が悪いと効き目が薄れることも
- 4-3. 漢方に詳しい医師などに自分の体質に合った漢方薬を選んでもらう
- 5. 漢方の効き目と特徴についてのまとめ
漢方薬とは?
1-1植物や鉱物などの薬としての性質を持っている生薬を調合したもの
漢方薬は化学成分ではなく、自然由来の体に優しい成分で作られているというイメージがあります。植物や鉱物など天然の素材の「生薬」を組み合わせて、調合されたものが漢方薬です。
民間療法と思われがちですが現在漢方の184種類が厚生労働省に認可され、健康保険適用で処方される「医療用漢方」として使用されています。しっかりと効能も医学的根拠に基づき認められている薬学なのです。
1-2「中医学」が日本に伝わり独自の発展の末に「漢方」と名づけられた
漢方は中国の医学療法ではなく、中医学をベースにした日本独自の東洋医学の一種です。
5世紀頃に中国から中医学が伝承された後、日本人の体質や風土に合わせて時代とともに少しずつ変化し人々の生活に馴染んでいきました。江戸時代にオランダから西洋医学が伝わると、「漢」の時代に伝わり発展してきた東洋医学を「漢方」※と呼ぶようになったと伝えられています。※諸説あります。
1-3診療所の71.8%が漢方薬を処方
漢方は現在医療の面でも大きな注目を集めています。アメリカでは西洋薬にはみられない効果が発見されるなど、日本だけでなく世界的にも漢方の効能は評価されつつあります。
また日本は超高齢化社会を迎えようとしており、複数の疾患を抱える高齢者が増加しています。西洋学では限界がある部分を東洋学の漢方で補い、それぞれを使い分けている診療所も大変多いです。
日経メディカルがONLINE登録している医師に行ったアンケート結果によると、71.8%もの診療所が高齢者に漢方を処方しているという結果がわかりました。その内の48.0%が「高齢者に漢方薬を使用し治療効果が上がった」と感じており、西洋医学でカバーしきれない部分に関して漢方薬が大きく期待されています。
参考URL:http://nmp.nikkeibp.co.jp/kampo/2012.html
漢方にはどんな効き目や特徴がある?
2-1体質改善が目的の場合
実際に漢方薬にはどのような特徴があるのか見てみましょう。お悩み別に漢方の特徴や、効き目について調べてみました。
胃腸が弱い
健康的な生活を送るためにも、栄養を吸収しやすくしてくれる胃腸の働きは欠かせません。胃腸が弱くお腹が下りやすい、食欲が湧かないというお悩みを抱えている人には次の特徴をもつ漢方がオススメです。
「六君子湯(りっくんしとう)」・・・食欲不振や胃もたれしやすく胃腸が弱いと感じる人にオススメの漢方。胃腸の働きを促す「人参」や「茯苓(ブクリュウ)」・胃腸の冷えを改善へと導く「半夏」・水分代謝を促す「朮(ジュツ)」など8種類の生薬が配合されている。冷え症や柔便など胃腸の調子を高めたい時にも使用される。
アレルギー体質
刺激に敏感になりやすいアレルギー体質の人は、花粉や埃など何気ない外からの刺激でも過剰に反応してしまいくしゃみ・鼻水・涙など悩みを抱えてしまいます。漢方では刺激を感じにくくする体質改善へ導くタイプと、鼻水や涙などのアレルギー症状を鎮めるタイプの種類と使い分けて使用してみるのもよいでしょう。
「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」・・・鼻づまりや咳の症状・気管支ぜんそくなどのアレルギー症状のある時に使用されることが多い漢方。炎症を鎮める「甘草」や「半夏」・発汗させ熱を冷まし炎症を鎮静させる効果がある「桂皮」・血管を正常な状態へ導く「芍薬」などが配合されている。眠気の副作用を伴わないので仕事や勉強など集中力が必要な時にも使用しやすい。
「荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)・・・鼻づまりで呼吸が非常にしにくくなってしまう時にオススメの漢方。鼻の通りを促す効果が期待出来る漢方が中心に配合されている。
発汗と解毒作用に優れている「荊芥(ケイガイ)」・小青竜湯にも配合されている「甘草」・抗菌作用や抗アレルギー作用をもつ「黄芩(オウゴン)」などが調合されている。水分代謝をスムーズにし体内のめぐりを活発に導く効果も期待出来る。
肌荒れが目立っている
肌が荒れてしまうとメイクのノリが悪くなったり、刺激を感じやすくなってしまうこともあります。漢方で肌荒れを改善したい時は肌トラブルのタイプによって漢方の種類を使い分け、根本的な原因から肌荒れの改善を目指します。
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)・・・赤みのある肌荒れやニキビの炎症が気になる時に。
桂枝茯苓丸料加薏苡仁(けいしぶくりょうがんりょうかよくいにん)・・・あごやフェイスラインにニキビが出来やすく肌荒れが目立つ時に。
当帰飲子(とうきいんし)・・・乾燥による肌荒れが気になる人に。
「黄連解毒湯」は体の熱を冷ますことでニキビや肌の炎症を鎮静させる効果が期待出来ます。また「桂枝茯苓丸料加薏苡仁」には肌のめぐりを高めて新陳代謝を促し、肌荒れを改善へと導いてくれます。「当帰飲子」は乾燥による痒みを抑制し、潤いと栄養を与えて肌を元気に活性化させる効果が期待出来ます。
それぞれ肌の状態に合わせた漢方を選ぶことで、内側から肌トラブルの根本に対してアプローチを行います。ただ表面だけをきれいに見せるのではなく、肌荒れを起こしにくい体質へと改善出来るのが嬉しいです。
2-2困ったときに使いたい
毎日元気にイキイキと過ごせるのが一番ですが、体調が優れないという時もあります。日常生活で次のような悩みを抱えた時にオススメの漢方を見ていきましょう。
疲労困憊している時
仕事や育児などの日々の疲れが溜まってくると、朝起きるのがツラい時もあるはずです。移動中の電車の中でもすぐ座りたくなったり、エレベーターやエスカレーターを探してしまうことはありませんか?
このようなお悩みに悩んでいる時は、「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」がオススメです。滋養強壮効果で知られる「人参」や、血流の流れを高める「白朮(びゃくじゅつ)」・体内を温める効果が期待出来る「当帰」などが配合されています。疲労から回復しようとする体本来の機能を高めて、疲れにくい体作りを目指す漢方です。
二日酔いの不快感
仕事で接待や飲み会が続いて、翌日に二日酔いの不快感で悩んでしまうとき、むくみや、眩暈・頭痛などの症状に困った時にオススメなのが「五苓散(ごれいさん)」です。水分代謝をスムーズに導く「沢瀉(たくしゃ)」や「猪苓(ちょれい)」、血流の流れを高め老廃物の排出を促す「白朮(びゃくじゅつ)」などが配合されています。飲酒によって乱れた体内の水分バランスを整えて、体の外へ排出を促すデトックス効果が期待出来ます。
即効性のある漢方もある
3-1初期の風邪などには即効性を発揮する漢方もある
漢方はしばらく飲み続けないと効果がないと言われがちですが、即効性を発揮する漢方も存在しています。風邪薬を飲むか悩んでしまう時の初期の風邪対策の漢方を見ていきましょう。
3-2急性病(風邪)に使われている漢方薬
くしゃみが止まらない場合や、寒気がする…といった初期の風邪にはこのような漢方がオススメです。
葛根湯
風邪を引いた時に飲む漢方として有名です。葛根湯は初期の風邪の頭痛や、発熱・寒気などの症状に優れた効果を発揮します。葛根湯は発汗を促すことで体内にこもった熱を放出させ、症状の緩和を促してくれます。
桂枝湯
葛根湯と同じく風邪の初期症状の際に用いられる漢方ですが、体力の低い高齢者や胃腸の弱い人には「桂枝湯」が向いています。風邪の頭痛や、発熱・寒気などに効果的であり、葛根湯よりも穏やかに発汗する作用があるので体に負担が少なく体内の治癒力を回復へと導くことが出来ます。
麻黄湯葛根湯
咳が出ており、節々に痛みを感じるような初期症状に優れた効果を発揮してくれます。発汗を促し体内の治癒力を高めてくれる一方で、覚醒作用があります。
ゆっくりと就寝しながら風邪の症状を回復させたい時は注意が必要です。また発汗させるパワーが高いので、体力の低い高齢者や虚弱体質の人には「桂枝湯」の方がオススメです。
漢方選びのポイント
4-1他人が効いたから自分に効くとは限らない
同じ漢方でも体質によって合わないケースもあります。漢方は西洋医学の薬とは違い、自分自身の回復力を高める方法です。
その人自身の持つ体質が大きく関係してくるため、同じ漢方を使用しても同じように効果があるとは限りません。漢方を選ぶ時は口コミや他人の評価だけで選ぶのではなく、自分の体質を踏まえて選ぶことが大切です。
4-2養生が悪いと効き目が薄れることも
漢方は「養生」という言葉がポイントになってきます。養生とは自分の健康と向き合い、前向きに未来へ進んでいくという考え方です。
漢方では今現在の症状を回復するだけでなく、未来をよりいっそう健康に過ごすためにはどうしたらいいのかという点にもとづいて考えられています。ただ症状を緩和させるためだけに適当に漢方を使用するのではなく、養生のために安静に過ごしたり、栄養のある食事を摂取するなどの心がけも大切なのです。
4-3漢方に詳しい医師などに自分の体質に合った漢方薬を選んでもらう
漢方は同じような効果がある種類のものでも、体質によって合わない場合もあります。虚弱体質の人や高齢者向けのものや、体力がある人向けの漢方などさまざまです。
自分の体質に合う漢方を選びたい時は、漢方の詳しい知識のある医師や薬剤師に相談してみましょう。また服用している薬との相性もあるため、治療中の症状がある場合にも医師・薬剤師に確認してからの使用がオススメです。
漢方の効き目と特徴についてのまとめ
漢方は自然由来の優しい成分のみで作られており、高齢者社会となる現代の治療方法としても高く評価を受けつつあります。漢方は同じ効果が期待出来るものでも体質によって相性があるため、お悩みだけでなく自分の体質も理解することが大切です。
漢方を選ぶ際にはぜひ今回ご紹介した効き目や、特徴を参考にしてみてください。迷った時は漢方の専門知識のある医師や、薬剤師に相談してみるのもよいでしょう。自分の体質にあった漢方でお悩みを改善へと導き、養生する生活を目指してみてはいかがでしょうか。