ソフト食とはなにかと作り方
介護食はこれまで多くの方を支えてきました。
近年では、手軽にスーパーでも手に入れられるようになり、介護に関する専門的な知識がなくても介護食品であると一目で分かるように工夫がされています。
今回は、介護食の中でも「ソフト食」とは何かについてとその作り方に着目してお話しします。
ソフト食(やわらか食)とは?
そもそもソフト食とはどのようなものを指すのでしょうか。
また、ソフト食にすることでどのようなメリットがあるのでしょうか。
食材を一つずつ個別にミキサーにかけて固め直したもの
ソフト食は、食材をミキサーにかけて固め直したもののことをいいます。加齢や病気により噛む力が弱くなっている方向けに柔らかくして提供する食事です。
食事の原型を残しているため、食事を楽しむことが出来る点が魅力の1つです。
盛り付けや形が普通食に近く、美味しそうな見た目と香り
ソフト食は、盛り付けが普通食に限りなく近いため、他の形態と異なり食事の雰囲気や香りを十分に楽しむことができます。舌触りもなめらかなことから、とても噛みやすいのも特徴の1つです。
軟菜食よりも柔らかいため食べやすく、消化しやすい
ソフト食は、軟菜食と比較してやわらかくできており、消化しやすい特徴があります。食べ物で例えるならば、豆腐のようなかたさが最も近いです。
胃に負担をかけることなく消化されるため、病気により身体が弱っている方でも食べて頂ける食形態です。
きざみ食やミキサー食のデメリットがカバーされている
また、ソフト食は、大きい食材を食べやすく刻んだ状態で提供するきざみ食や、食材の原型をとどめずドロドロの状態であるミキサー食のデメリットがカバーされています。
ミキサー食や刻み食のデメリット
・見た目が悪く食欲がわかない
・口の中にカスが残りやすい
・口の中でまとまらない(きざみ食)
・誤嚥を起こしやすい(きざみ食)
・具材がわからず美味しくない(ミキサー食)
・舌苔ができやすい(ミキサー食) など
例えば、きざみ食であれば誤嚥を起こしやすいことや口のなかでまとまりにくく、一定の噛む力がなければ飲み込むことが難しいですがソフト食は口当たりなめらかで飲み込みやすいです。
また、ミキサー食は誤嚥予防としては効果的であるものの、食べ物の原型が分からず食欲減退につながってしまいます。
高齢者ソフト食の特徴
次に高齢者のソフト食の特徴を述べます。
他の食形態と比較しながら読み進めると、イメージが湧きやすいかと思います。
食事の見た目・香りを楽しめる
まず、食事の見た目や香りを十分に楽しむことができます。ミキサー食では、このことが成しえません。
食事を摂取する上で見た目や香りは大変重要ですし、食欲に直結します。
しっかりと形がありながらも、食べやすい
ソフト食は形がありながらもきざみ食と比較して、食べやすいです。誤嚥などの心配性も低く、噛むことに苦労しないので大変食べやすいといえます。
豆腐程度のかたさであるため、歯がない方でも砕くことが可能です。
もし、きざみ食のようなかたさがあれば、飲み込むことが困難な方でもソフト食で心配ありません。
食塊になっているため、口の中でまとまりやすい
煮込んだり蒸したりして柔らかくしている
ソフト食は、煮込むなどして柔らかさをだしているため、口の中でまとまりやすく飲み込みもしやすいです。
刻まず、つなぎなどでまとまっている
刻み食とは違い、食塊になっているため、食べこぼしも少ないです。
滑りがよく、飲み込みやすい
ソフト食は、滑らかな舌触りと飲み込みやすさが最大の特徴です。箸が上手く使用できない方でも食事が可能である点も魅力的ですね。
口の中にカスが残りにくい
また、ソフト食は塊があるため、きざみ食と比較すると口の中にカスが残りにくいです。
野菜なども基本的には皮を取り除いた状態で煮るなどするため、パサパサを感じることなく食べることができます。
高齢者ソフト食の位置づけと導入ステップ
基本的に、身体の状態に合わせて食事形態を変化させていきます。
どのような状態の際に、どの食事形態を適用させるのかを理解しておく必要性があります。
きざみ食:咀嚼機能の低い人
きざみ食は、噛む力が弱い方向けに作られています。大きなものであれば噛み切る力が必要であるため、刻むことで噛む力を最小限に抑えることを目的としています。
義歯の方や歯がない方にでも安心して食べて頂けるのが、きざみ食です。
ミキサー食:嚥下機能の低い人
ミキサー食は、飲み込む能力が低下している方に用いられます。噛む力も必要なく、飲み込むだけの食事であると捉えて下さい。全ての食事がポタージュのような状態になり、とても飲み込みやすい状態になっています。
ソフト食:咀嚼~嚥下までしやすい
ソフト食は、噛むことも飲み込むことも簡単にできるように作られています。食事の形態の中で最も重症度の高い方に用いられます。
導入ステップ
身体機能の衰えとともに、普通食→軟菜食→ソフト食と変えていくのが一般的です。
食形態は、本人の能力をいかして決定するため、普通食が出来る方に軟菜食を提供することや、軟菜食が出来る方にソフト食を提供するということはしません。
ソフト食の作り方
食事形態の中で最も形のやわらかいソフト食を作るには、どのような工夫が必要なのでしょうか。
食材選びから具体的な作り方までご紹介致します。
食材選び
・繊維の少ない食材が適している
・肉や魚は脂肪が多く含まれる部位がよい
ソフト食を選ぶ際、基本的には繊維の少ない食材を選ぶようにします。理由としては、繊維が多いとミキサーにかけても残ってしまう場合があるためです。
また、具材ごとにミキサーにかけていくのがポイントです。
調理の方法
では、ソフト食の実際の調理方法をご紹介致します。ここでご紹介する調理法については、必ずしもこうしなくてはいけないものではなく、一例です。
・とろみをつける
まずは、食材にとろみをつけます。
片栗粉やゼラチンでとろみをつける
使用するものは、片栗粉やゼラチンが一般的です。
汁物などはサラサラしていると誤嚥の危険性がある
また、汁物などはサラサラしていると誤嚥の危険性があるため注意してください。
油を使う :オリーブオイル、ごま油やバターなど
次に、油を使用していきますがオリーブオイル、ごま油やバターなどを用いるとよいでしょう。
少し香りのついたものである方が、食欲をそそります。
だからといって、使用しすぎは良くありませんので適量にしてください。
つなぎを使用 :つぶした食材同士をつなげる卵や片栗粉、油などを活用
使用するつなぎは、卵や片栗粉、油を使用してください。
舌でつぶせる程度のほどよい硬さにできる
コツとしては、口の中でまとまりが出る程度のかたさにするのがよいでしょう。
また、いかに食べやすく、そして誤嚥を防ぐことが出来るかということを意識する必要があります。
ソフト食の食材ごとの調理ポイント
ここでは、食材ごとの調理のポイントをご説明致します。
ソフト食は、選ぶ食材が全てといっても過言ではありません。作成に当たって最も重要な点となりますので確認してください。
野菜
繊維が少ない食材をできるだけ選ぶ
野菜は、できるだけ繊維が少ない食材を選びます。おすすめはトマト・ナス・ピーマンです。
トマトの皮は口の中に残りやすく、飲み込みの阻害となりますので事前に取っておきましょう。
ナスも同様に皮をむくと良いのですが、ピーラーや包丁でむくよりもいったん揚げてからの方がスムースにむくことができますよ。
ピーマンは、後々食べやすいようにゆでた後に皮をむきましょう。簡単にむくことができます。
繊維が多めの食材は、繊維の方向に対して垂直にカットしてからミキサーにかける
また、繊維が多めの食材は、繊維の方向に対して垂直にカットしてからミキサーにかけてください。
魚
脂分が多い部位を選ぶ
魚を選ぶ際は、脂分が多い部位を選ぶようにしましょう。理由としては、加熱によりばらばらになりにくく、のどごしもよいためです。
おすすめは、イワシやサバです。これらは脂肪分が高くまとまりやすいです。
しかし、マグロなどの赤身の魚は身がまとまりにくいので食べにくいため、避けると安心です。
また、骨は丁寧に取り除き、ばらばらになりやすいので、つなぎでまとめるように調理しましょう。
肉
柔らかく、脂肪が多い部位を選ぶ :食べやすく、のど越しがよい
肉は、柔らかく、脂肪が多い部位を選ぶようにしてください。肉の多くは、加熱するとかたくなってしまうため、選ぶものが大変重要になってきます。
ひき肉のしゃぶしゃぶ用は大変食べやすく調理することが出来ますが、皮の部分はパサパサして食べにくいので取り除きましょう。
ひき肉は加熱でバラバラになるため、卵などでつないでまとめる
また、ひき肉を使用する際は加熱でバラバラになるため、卵などでつないでまとめるようにしてください。
詳しく解説!ソフト食とは何かと、作り方についてのまとめ
ソフト食は、最も食べやすい食事形態の1つです。調理の際には、まとまりやすい状態を作れるように意識してくださいね。
目的は、食べやすくすることと誤嚥を防ぐことですので、本人の食事の際の状態(ムセがあるか否か・飲み込みやすいかどうか)に着目し、調整してください。
ソフト食を正しく理解して、介護をより楽しく行いましょう。
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